ラベル 小川学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 小川学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年12月14日水曜日

アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016 アンコール!



<2016アピチャッポン・イヤー>を締めくくる、アピチャッポン・ウィーラセタクンの特集上映がアンコール開催!

その名も「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016 アンコール!」

(2016年12月17日よりシアター・イメージフォーラムにて開催されます)

**********************

<2016アピチャッポン・イヤー>のラストを飾る特集上映。

『ブンミおじさんの森』(2010)で2010年カンヌ国際映画祭・パルムドール(最高賞)に輝いたタイの天才監督にして美術作家でもあるアピチャッポン・ウィーラセタクン。今年は1月に幻の傑作『世紀の光』(2006)初公開と特集上映<アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016>が開催され、3月には最新作『光りの墓』(2015)の公開、また、各地での展覧会やワークショップや「さいたまトリエンナーレ2016」への参加、きたる12月13日からは東京都写真美術館での個展スタートと、映画に美術にまさに<アピチャッポン・イヤー>。そしてそのラストを飾るのが本特集上映<アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016アンコール!>です。


全長編作と貴重な共同監督作や関連作も上映し、さらに多面的に。

今回は、これまでの全劇場長編作とともに、単独監督作とはまったく違う異色の共同監督作であるモンド西部劇ミュージカルコメディ『アイアン・プッシーの大冒険』(2003)を上映。さらに関連作として、アピチャッポンの故郷でありその映画の主な舞台であるタイ東北部イサーン地方を描いたタイ映画史に輝く名作『トーンパーン』(1976)、『東北タイの子』(1982)も上映。全9作を上映し、より多面的により深く、アピチャッポンの映画世界に触れることができます。



アピチャッポン監督も来場。何回見ても発見がある作品群をぜひスクリーンで。

また、開催期間中には監督本人が来場し、舞台挨拶やQ&Aも予定。上映作品を網羅したパンフレットも販売される。映画館の闇は、アピチャッポンが繰り返し描くタイ東北部イサーン地方の森へとつながるタイムマシーン。闇の中に身を沈め、ふと目を覚ませばアピチャッポンと森を彷徨っている、そんなスリリングな体験を映画館でぜひ!

12/13からは東京都写真美術館の個展。12/17からは本特集上映。美術を見てから映画を見るか、映画を見てから美術を見るか。<2016年アピチャッポン・イヤー>のラストにふさわしくたっぷりとお楽しみください。

**********************


上映作品解説


**********************

①『真昼の不思議な物体』 

原題:Mysterious Object at Noon

2000年|タイ|83分|モノクロ|35mm

山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション 最優秀&NETPAC特別賞受賞/全州国際映画祭グランプリ受賞


©Kick the Machine Films  提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭


タイ東北部の村で行商人の女性が、撮影クルーに促され、一つの架空の物語を語り始める。その続きを象使いの少年たち、伝統演劇の劇団員たちなど、様々な人々がリレー形式で即興的に語り継ぎ、物語は二転、三転しながら思わぬ方向に進んでいく。驚くほどの自由なイマジネーションと同時に緻密に考えられた構成で、世界を仰天させた記念すべき長編初監督作品。

提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭 
協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター


奥平 詩野
映画『真昼の不思議な物体』評 

今泉 健
映画『真昼の不思議な物体』評 

井河澤 智子
映画『真昼の不思議な物体』評

長谷部 友子
映画『真昼の不思議な物体』評 

髙橋 雄太
映画『真昼の不思議な物体』評


**********************

②『ブリスフリー・ユアーズ』 

原題:Blissfully Yours

2002年|タイ|125分|カラー|35mm

カンヌ国際映画祭ある視点賞/東京フィルメックス映画祭最優秀作品賞/テサロニキ映画祭グランプリ/ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭監督賞&国際批評家連盟賞ほか

©Kick the Machine Films  提供:Kick the Machine Films

ミャンマーからやって来た不法労働者のミン、そのガールフレンドの若い女性ルン、ミンを何かと気づかう中年女性オーン。ミンとルンとは森の中をさまよいながらひと時を一緒に過ごす、偶然同じ時に不倫相手と森に入ったオーンは姿を消した相手の男を探すうちにミンとルンと遭遇する。ジャン・ルノワール監督の不朽の名作『ピクニック』にもたとえられた至福の映画。

提供:Kick the Machine Films 
協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター


高橋 秀弘
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評

井河澤 智子
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 

大久保 渉
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 

岡村 亜紀子
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 


**********************

③ 『アイアン・プッシーの大冒険』

原題:The Adventure of Iron Pussy

2003年|タイ|90分|カラー|デジタル

監督:マイケル・シャオワナーサイ、アピチャッポン・ウィーラセタクン


©Kick the Machine Films  提供:GMM GRAMMY Public Company Limited

フィラデルフィア生まれのタイ人現代美術アーティスト、マイケル・シャオワナーサイとの共同監督作。シャオワナーサイ扮する女装のスパイ“アイアン・プッシー”は、怪しい富豪の屋敷にメイドとして潜入。大騒動をまきおこす。他のアピチャッポン作とは全く違う、ツッコミどころ満載の“モンド西部劇ミュージカルコメディ”。自身は、ビデオアート・プロジェクトの一つと位置づけ、要所要所のショットにアピチャッポンらしさを発見するのも楽しい。

提供:GMM GRAMMY Public Company Limited
協力:boid

**********************

④『トロピカル・マラディ』 

原題:Tropical Malady

2004年|タイ、フランス、イタリア、ドイツ|118分|カラー|35mm

カンヌ国際映画祭審査員賞/東京フィルメックス映画祭最優秀作品賞/サンパウロ国際映画祭批評家賞/カイエ・デュ・シネマ2004年ベスト1ほか


©Kick the Machine Films  提供:Tamasa Distribution

愛し合う二人の青年の日常がみずみずしく描かれる前半から、一転、不穏な空気に包まれる後半。冒頭には日本の作家、中島敦の「山月記」の一節が引用され、アピチャッポン作品を貫く重要な要素の一つである“変容”が最も顕著に表現されている。観客に森の中に迷い込んだかのような感覚を与える撮影と音響は圧巻。カイエ誌ベスト1にも輝いた傑作。

提供:Tamasa Distribution 
協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター

長谷部 友子
映画『トロピカル・マラディ』評

**********************

⑤『世紀の光』 

原題:Syndromes and a Century

2006年|タイ、フランス、オーストリア|105分|カラー|DCP

ヴェネチア国際映画祭公式出品/ドーヴィル・アジア映画祭グランプリ/フリブール国際映画祭スペシャル・メンションほか


©Kick the Machine Films  提供・配給:ムヴィオラ

今年日本で初公開された、ファンの間で特に人気が高い作品。映画は2つのパートに分かれ、前半は地方の緑豊かな病院、後半は近代的な白い病院が舞台となる。登場人物の多くも重なり、医師の恋の芽生えなどのエピソードは2つのパートで反復され、夢見ているような奇妙な感覚に誘われる。撮影中に多くのスタッフが恋に落ちたというエピソードを持つ、“微笑み”と“驚き”の傑作。

提供・配給:ムヴィオラ


**********************

⑥『ブンミおじさんの森』 

原題:Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives

2010年|イギリス、タイ、ドイツ、フランス、スペイン|114分|カラー|35mm

カンヌ国際映画祭パルムドール/アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞/カイエ・デュ・シネマ2010年ベスト1ほか

©Kick the Machine Films  提供:シネマライズ 配給:ムヴィオラ

腎臓の病に冒され、死を間近にしたブンミは、妻の妹ジェンをタイ東北部の自分の農園に呼び寄せる。そこに19年前に亡くなった妻が現れ、数年前に行方不明になった息子も姿を変えて現れる。やがて、ブンミは愛するものたちとともに森に入っていく。美しく斬新なイマジネーションで世界に驚きを与えた、カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作。

提供:シネマライズ 配給:ムヴィオラ



**********************

⑦『光りの墓』 

原題:Cemetery of Splendour

2015年|タイ、イギリス、フランス、ドイツ、マレーシア|122分|カラー|DCP

カンヌ国際映画祭<ある視点>部門出品/アジア太平洋映画賞最優秀作品賞/国際シネフィル協会賞最優秀未公開映画賞ほか


© Kick The Machine Films / Illuminations Films (Past Lives) / 
Anna Sanders Films / Geißendörfer Film-und Fernsehproduktion /
Match Factory Productions / Astro Shaw (2015) 

提供・配給:ムヴィオラ


タイ東北部。かつて学校だった仮設病院。原因不明の“眠り病”にかかった兵士たち。ある日、病院を訪れたジェンは、前世や過去の記憶を見る力を持った若い女性と知り合い、その病院の場所が、はるか昔に王の墓であったと知り、兵士たちの眠り病に関係があると気づく。映画作家としてのさらなる進化を感じさせ、またタイの政治状況に対する想いも込められた傑作。

提供・配給:ムヴィオラ


長谷部 友子(寄稿・neoneoWEB)
映画『光りの墓』評

**********************

関連上映作品


アピチャッポン映画にとって、その故郷タイ東北部イサーン地方は特権的な場所。かつてカンボジアとラオスという異なる帝国から成り立ち、バンコクとは全く違う文化を持っていたイサーン。貧しい地域であり、60〜70年代にはその森に共産主義が逃げ込み、共産主義者狩りの舞台ともなった場所。
アピチャッポンの土地の記憶を掘り下げる為に、ぜひとも見ておきたいタイ映画史の名作2本が上映されます。


**********************

⑧『トーンパーン』

原題:Tongpan

1976年|タイ|63分|モノクロ|デジタル

監督:スラチャイ・ジャンティマートン、パイジョン・ライサグン、ユッタナー・ムクダーサニット


© The Isan Film Group  提供:Multimedia Thailand


75年に実際にあったダム建設問題をドラマ化したドキュ・ドラマ的な白黒16mm作品。ダム建設で土地を失った農夫のトーンパーンは妻と2人の息子を抱え、ムエタイの試合に出たり、サムロー(人力三輪車)の運転手をして何とか暮らしていたが……。民主化運動が高まった当時、共産主義者が逃げ込んだイサーンが舞台なので、政府により上映が禁止になったという問題作だが、イサーン農民の貧しさ、町の風俗などのリアルで詩情ある描写は必見。後年、『メナムの残照』などを残した巨匠ユッタナー・ムクダーサニットの貴重な初期作でもある。

提供:Multimedia Thailand 
協力:boid

**********************

⑨『東北タイの子』

原題:A Son of the Northeast

1982年|タイ|130分|デジタル

監督:ウィチット・クナーウット 原作:カムプーン・ブンタウィー


© Five Star Production Co., Ltd.  提供:Five Star Production

東北タイに生まれ、行商人、日雇い労働、刑務所の獄吏など様々な職を経て作家となり、晩年は国民的作家となったカムプーン・ブンタウィーの同名小説の映画化。当時タイで大ヒットし、映画賞も独占した。干上がった地で貧しく暮らすイサーン農民が、遠く離れた川まで魚を獲りに牛車のキャラバンで旅に出る姿を描く。見所は何と言ってもイサーンの知られざる生活風景、日本の伝承話にも通じる大らかな性の描写も素晴らしい。83年にマニラ映画祭で審査員だった大島渚が絶賛したのも納得の傑作。

提供:Five Star Production 
協力:boid

**********************




アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016アンコール!

開催日程
2016年12月17日(土)~1月13日(金)<4週間>

会場
シアター・イメージフォーラム 
(東京都渋谷区渋谷2-10-2)

上映作品
『真昼の不思議な物体』『ブリスフリー・ユアーズ』『アイアン・プッシーの大冒険』
『トロピカル・マラディ』『世紀の光』『ブンミおじさんの森』『光りの墓』(以上アピチャッポン監督作)

関連上映
『トーンパーン』(ユッタナー・ムクダーサニットほか監督)、『東北タイの子』(ウィチット・クナーウット監督)

公式ホームページ
http://www.moviola.jp/api2016/woods2/index.html

監督トークイベント
12月19日(月)15:30の回『光りの墓』上映後&18:30の回『世紀の光』上映前
*トークの日時はやむを得ぬ事情により変更となる場合があります。

配給
ムヴィオラ:http://www.moviola.jp

**********************

【ことばの映画館の批評家による<アピチャッポン監督作品>映画評一覧】


井河澤 智子
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 
映画『真昼の不思議な物体』評 

今泉 健
映画『真昼の不思議な物体』評 

大久保 渉
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 

岡村 亜紀子
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 

奥平 詩野
映画『真昼の不思議な物体』評 

佐藤 奈緒子
映画『世紀の光』評 
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評

高橋 秀弘
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評

高橋 雄太
映画『世紀の光』評 
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 
映画『ブンミおじさんの森』評
映画 アートプログラム<中・短編集>評
映画『真昼の不思議な物体』評

長谷部 友子
映画『トロピカル・マラディ』評
アートプログラム『国歌』評 
映画『真昼の不思議な物体』評 
映画『世紀の光』評 
映画『ブンミおじさんの森』評
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評

**********************

【寄稿・ドキュメンタリーマガジンneoneo・ウェブサイト「neoneo web」】

長谷部 友子
「あなたに起きていてほしい」-アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『光りの墓』

**********************

2016年6月28日火曜日

映画『ひと夏のファンタジア』公開初日・舞台挨拶レポート

昨年開催された第37回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)にて特別上映され話題となった、奈良県五條市にて撮影された映画『ひと夏のファンタジア』の初日舞台挨拶が6月25日(土)、渋谷ユーロスペースにて行われ、チャン・ゴンジェ監督、主演の岩瀬亮、キム・セビョク、康すおんが登壇し、撮影時の思いなどをそれぞれが語った。

映画は2014年に河瀨直美監督のプロデュースのもと、全編が奈良県五條市で撮影された。奈良県は河瀨監督作品『萌の朱雀』で知られるようになった山間の静けさのある土地である。本作は白黒のドキュメンタリー調からなる《第一部》〜ドキュメンタリー調、日本の夏をしっとりと色彩ゆたかに男と女のある一日を収めた《第二部》〜劇映画調の2部構成で作られた作品である。

ワンシーン・ワンカットで撮られた撮影現場にて、主演の岩瀬は「これは休憩ありの6時間の大作になってしまうのでは……」と思ってしまうほどの長回しがあったことなど、現場での感想を振り返った。また、《第二部》では元々シナリオがなく、監督と俳優陣が現場で作り上げていった撮影秘話などを交えた舞台挨拶となった。


左より、チャン・ゴンジェ監督、キム・セビョクさん、岩瀬亮さん、康すおんさん


***********************************

—今日は記念すべき日本公開日です。感想をお聞かせください。

ゴンジェ ちょうど2年前に奈良の五條で撮った映画です。河瀨直美監督のプロデュースのもと、ここにいらっしゃる俳優の皆さんと、とても楽しく撮った映画です。東京の観客の皆さんがどのようにこの映画を観てくれたか気になりますし、後でまたお話を聞かせてくれたら嬉しいです。とにかくどんな感想を持ってくれたかが今一番気になっています。

セビョク 韓国では昨年公開されました。韓国でも本当にたくさんの方に観ていただいた映画です。私は映画の中で日本語を話す役を演じたこともあり、皆さんの反応が気になります。

岩瀬 この映画はもう韓国では公開されているので、韓国の方たちの反応は見ているのですが、日本の方々がどういう風に見られるのか僕も気になるところです。感想を楽しみにしています。あと、今日万全な状態で来られなかったことを哀しく思っております(笑)。本当にすみません(笑)。

 僕は最初、言葉の壁をどう乗り越えていくんやろうなぁと思ったんですけど、監督たちと寄り添いながらお互い五感を研ぎ澄ませていくと何とかシーンを作っていけるものなんやなぁと感じて、それが面白かったですね。


撮影当時のエピソードをお聞かせください。

ゴンジェ まずとても時間がなかったことが大きかったです。この映画は一部と二部に分けられていますが、一部はシナリオがあって作ったものです。ただ、二部の場合はシナリオがない状態で撮影しなければならず、本当に毎日俳優の方たちと相談しながら、即興で撮った部分も多い映画でした。俳優の立場としたら、もしかしたらそういう作り方は面白いかもしれないですが、監督の立場としては、本当にどうやっていこうか悩んだり大変な思いをした映画です。

セビョク 私の場合は海外で撮影する経験がはじめてでしたし、出演者や監督の皆さんと寝泊まりしながら合宿のように過ごして撮影した経験もはじめてでした。そういった経験自体が、楽しく良い経験でした。その時も楽しかったのですが、過ぎてみて、本当に良い思い出として心の中に残っています。また、そういう状況で撮影しましたので、より集中して演技、撮影ができたかなと思っています。とても良い思い出です。それから今、一番の思い出として残っているのは、本当に暑かったことです。今日、撮影していただいたカメラマンの方に来ていただいていますが、撮影監督の方が本当に汗をダラダラ流しながら撮影していただいた記憶が蘇ってきます。

ゴンジェ 今日は撮影監督の藤井昌之さんが会場にいらっしゃっています。


―この間、ワイルドフラワー映画祭で撮影賞を授賞されました。

ゴンジェ 韓国のインディーズ映画のための授賞式でも最優秀撮影賞を授賞されました。トロフィーはちゃんと受け取られましたでしょうか。

藤井 (観客席から答えて)受け取りました!

岩瀬 撮影で覚えているのは、二部のシナリオがなかったので、そのシーンのスタートと終わりがはっきりしてなくて、ワンシーンワンカットで全部撮影し、それを切り取っています。実際はどれも20~30分平気で回していたので、「これは休憩ありの6時間の大作になってしまうのでは……」と思いながら撮っていたことを思い出しました。

 監督から最初に言われたのが、「俳優としてバレないように、そこに存在するようにいてほしい」ということでした。それは僕も昔から一度やってみたかったことでした。どうしても役者ではない一般の方と同じ画面に映ると違和感が出てしまうので、どういう風に(画面内に)収まるかということばかり考えていました。だから五條に行ってもウロウロウロウロして、色んな店や図書館などで現地の人たちと話したりしました。何かないかなと思いながら、そればかり考えていたことを思い出しますね。


そういった素晴らしい演技が、ドキュメンタリーとフィクション、ファンタジーにつながっていくことになったのではないかと思います。その点、監督はいかが思われますでしょうか。

ゴンジェ 韓国でも観客の方や評論家の方からの評価を聞くと、やはり俳優のやり遂げた要素が力となってくれた部分が大きい映画だ、という評を多く聞きました。個人個人の演技はもちろん素晴らしいですし、みなさんのアンサンブルも上手く効果が出たと思っています。本当に俳優の皆さんのおかげだと思っています。




昨年、韓国では3万6千人を超える大ヒットを記録しました。キム・セビョクさんにお聞きしますが、その理由はどういうところにあったとお考えでしょうか。

セビョク
 この映画を観ていただいた皆さんは、それぞれ好きな部分がどうも違うようなんですね。一部が好きな方もいますし、二部が好きな方もいます。また、ひとつひとつの細かいシーンまで好きなところがそれぞれ違いますので、本当に個人個人の何かと持っているものを刺激するものがあるのではないかと思います。ただ、それが何かはわからないのですが、何かみなさんそれぞれに届くものがあったのかなと思っています。

ゴンジェ 韓国では20代の女性の観客の反応が圧倒的に多かったんですね。ひとりで海外に行こうという経験を通じて、そこで素敵な人に会ってロマンスが芽生えるところに惹かれた観客が多かったのではないかと感じています。


岩瀬さんは韓国で公開時、空港でパパラッチされるほど人気があったようですが、そのへんはどうでしょうか?

岩瀬 (観客笑)。笑われてるじゃないですか(笑)!  話が重なってしまうかもしれませんが、女性が外国へひとりで旅をするっていうロマンチックな設定なので、そういう映画にたまたま出ていたのが僕なのかな、という感じを持っていますね。


監督はいかがでしたか?

ゴンジェ 岩瀬さんは韓国で今最もデートしたい人と言われるほどの人気です。10年前は加瀬亮さんの時代だと言われておりましたが、今は岩瀬さんがそうです(笑)。


この映画が韓国で多くの反響があったことについては、いかがでしょうか?

ゴンジェ インディーズの作品なので、観客はもともと入らないんですけども、公開したのはちょうど去年の今頃で、その時韓国はMARSが発生して公開が決まっていた他の映画も延期したりといろいろ起こっていて、どうなるかな? と思っていたのですけれども、初日に公開された時にお客さんが満席だったんですね。たくさんの方に見て頂いて、これは一体なんだろう? と思ったんですけれども、皆さんにそうやって本当に楽しんでいただいたので、監督として作ってよかったなあという気持ちです。もちろんこの映画は五條市から支援を受けていますけれども、私は単純にこの映画を五條の広報をするとか観光的に、ということは元々考えていなかったんですね。韓国の方が結果的に五條市に訪れてみたいと言って、実際五條に観光された方も本当にいましたし、今でも観光客にとって五條がトレンディだと聞いております。結果的には広報の映画になったなあというふうに思っています。


今日、来て頂いたお客さんの中で質問がある方はいらっしゃいますか?

質問 第一部の冒頭のシーンを見たときに、私は一瞬それが、日本語なのか韓国語なのか聞きわけられなかったのですが、かなりきつい関西弁ですし、小さい声でしゃべっている……それは監督はわざと観客は聞き分けられないだろうな、と意図して作られたのでしょうか?

ゴンジェ 私自身も日本語ができないので、日本語を言語としてではなく、音で聞いていたんですけれども、理解ができなくても音として聞いて欲しいというような意識を持って作業をしていました。


最後に一言、日本のお客さんへお一人ずつお願いします。

ゴンジェ まず、ユーロスペースで上映となることにご尽力くださった皆様、ありがとうございます。それから日本で公開できるようにしてくださった日本のスタッフの方々に本当に感謝しております。皆さんが楽しく見てくれたら本当に嬉しく思います。もし今日、面白いなと思っていただけた方がいたら、周りの人にも進めてください。それでは、みなさん楽しい週末の夜をお過ごしください。

セビョク 日本には旅行や撮影で来たことはあったのですが、自分が出ている映画が海外で公開されたという始めての経験になりました。とても新鮮で緊張したこともあったのですが、とても気分がいいです。皆さんがこの映画をどういうふうに見てくれたかということを、ずっとそれが気になっているのですけれども、楽しんで頂けましたら本当に嬉しく思います。

岩瀬 今日は本当にご覧いただきありがとうございました。僕はこの映画は本当に何度も見ているのですが、自分の家でもDVDがあって見たりするんですけれども、あまり、自分が出演してきた映画でそういう事をする事っていうのはなくて、毎回見る度に一部がよかったり、二部の方がすごく自分にヒットしたり、日によって違ったりしました。様々な魅力を持った映画になったのではないかなと思っているので、もし気に入っていただいたら、皆さんに伝えていたただければと思います。本日はありがとうございました。

 作品は一人歩きして行くものが多いと思ってるんで、この作品も出来るだけ一人歩きしていけるようにと願っております。ありがとうございました。


以上は2016年6月25日の公開初日に行われた舞台挨拶の模様から採録しました

(text:小川学)

***********************************


主演・岩瀬亮さんの単独インタビュー記事も併せてお読みください。

http://kotocine.blogspot.jp/2016/06/text_22.html


***********************************




『ひと夏のファンタジア』
2014/日本・韓国/96分/DCP

作品解説
<一部>
韓国から奈良県五條市に次回作のシナリオ・ハンティングのためやってきた映画監督テフン(イム・ヒョングク)は、助手兼通訳のミジョン(キム・セビョク)とともに、観光課の職員・武田(岩瀬亮)の案内で町のあちこちを訪ね歩く。古い喫茶店や廃校、ひとり暮らしの老人宅など、五條に暮らす人々をインタビューして回り、彼は花火大会の夜に不思議な夢を見る。
<二部>
韓国から奈良県五條市へひとりで旅行に来た若い女性へジョン(キム・セビョク)は、観光案内所で柿農家の青年・友助(岩瀬亮)と出会う。古い町を歩きながらともに時間を過ごす中で、友助は次第に彼女に惹かれていく。

キャスト
ミジョン:キム・セビョク
武田友助:岩瀬亮
キム・テフン:イム・ヒョングク
ケンジ:康すおん

スタッフ
脚本・監督:チャン・ゴンジェ
プロデューサー:河瀨直美、チャン・ゴンジェ

@Nara International Film Festival+MOCUSHURA

公式ホームページ
http://hitonatsunofantasia.com

劇場情報
6月25日(土)より 東京 ユーロスペースにてレイトショー
7月2日(土)より 大阪 シネ・ヌーヴォ、名古屋 シネマスコーレにてロードショー
7月9日(土)より 横浜シネマリン、8月以降 シネマテークたかさき ほか、全国順次公開予定


2015年6月11日木曜日

『デッド・シティ 2055』 ~ 放課後映画クラブ(座談会) ~

【『デッド・シティ 2055』のストーリー】

企業王ジュリアン(ブルース・ウィリス)は、現実世界に飽き足らないリッチな顧客の欲望を叶える、治外法権で享楽的なリゾート都市“VICE(ヴァイス)”をオープンさせる。そこでは人間と見間違うほどの精巧なレプリカントを相手に殺人や暴力行為、ドラッグ、レイプといった己のダークサイドの快楽を体現できるのだ。しかしそのせいで現実世界の犯罪も急上昇していた。富裕層たちは思うがままに勘違いするのだ、何故ヴァイスで許されることが現実世界では非合法に当たるのかと。事件を担当する刑事ロイ(トーマス・ジェーン)は、ヴァイス閉鎖こそが犯罪撲滅の解決策と考えていた。ある日レプリカント・ケリー(アンビル・チルダーズ)に不具合が生じ、毎夜消去されるはずの恐ろしい過去の記憶が残りフラッシュバックされる。自我に目覚めた彼女はロイの助けで現実世界へ脱走し、そこで自らの過ちを悔やむレプリカント開発者エヴァンに出会う。ヴァイス壊滅を熱望する3人は、ジュリアンの元へ真の現実世界を取り戻す戦いに乗り込んでいく……。



2015年6月某日
〜有楽町ビル サンマルクカフェにて〜
【 参加者:今泉小川栗田常川 (五十音順、敬称略) 

※この記事は『デッド・シティ 2055』の結末に触れている箇所があります

小川 ) じゃあこれから『デッド・シティ 2055』について座談会ということで…(鑑賞会)お疲れ様でした

今泉)お疲れ様でした

栗田)お疲れ様でした

常川)お疲れ様でした

 ) えーっと『デッド・シティ』ということで、僕はブルース・ウィリスは主役で、悪党をやっつけるっていうのを想像していたんですが、まったく違う展開でした

今 ) 端役でしたね

) まぁどうでしたか?っていうのを…アレですけど(聞きたいなと)

今 ) 笑

) 笑

) 笑

 ) まずケリー(アンビル・チルダーズ演じるレプリカント)っていう人は『ブレードランナー』(※1)的な何かかと…

公式HPより引用©2014 GEORGIA FILM FUND TWENTY-EIGHT,LLC 


 ) 「あ、これは」、みたいな、なので若い人が、映画好きの若い人が、こういうの撮ろうかな、ってそういう映画なのかなぁと。(今泉に向かって)どうですかね?

今 ) 話としてはなんか、『ロボコップ』(※2)みたいだなと。記憶の断片が残ってて、色々する、みたいな…

 ) ああー、そうそう

今 ) 今やってる『チャッピー』(※3)とかにも近いかなと

 ) (栗田に向かって)どうですか?

 ) なんかでも、人工知能とかあんま関係ないんじゃないかって感じもしましたけど

 ) あー、最後、誰が人工知能かもわからないような感じもしましたし…常川君は?

 ) ……

 ) 無言です(笑)

今 ) 笑

 ) 笑

 ) いや、最初の、ブルース・ウィリスの登場シーンがなんか、すげぇ、これは…「これは…」って感じでしたね…(笑)

 ) プロモーションビデオみたいな(笑)

 ) 銀行強盗とかマフィアみたいなとことか…

 ) あれこそ、バットマンの『ダークナイト』(※4)の始まりみたいな、あっけなくみんな死んじゃうみたいな感じかと。したら、いきなり“ウィーン”って(ブルース・ウィリスが)出てくるから「おや?」って思いましたよね(笑)、そこで

今 ) 笑

 ) 笑

 ) 笑

 ) あとほとんど白人なんですね、ほとんど外国人が出てこない。警察もほとんどみんな男で白人。で、「俺の銃でかいだろ?」って自慢してますけど。まぁ…そういう事ですよね(笑)

今 ) 笑

 ) 笑

 ) 笑

 ) 出てる女の人も金髪の人。白人の、セクシーな女の人しか出てこないっていう(笑)。こういう設定もはっきりしてますね

 ) 観てていつの時代か、よく分からなくなってきますね

 ) そーなんですよ。で、ここに(映画タイトルを指差して)「2055」って書いてあるんですよね。先入観でみると、「えっ、こういう2055年ですか?」って感じだよね(笑)

 ) なんかパソコンとかも古かったですよね

 ) あー

 ) あ、そうそう。だから「今」なんですよね。ほとんど「今」

 ) ぜんぜん未来感ない

 ) ぜんぜん進化してない

 ) それがわざとなのか、なんなのか…でも逆にそれがけっこうリアリティを持っていて、あの、微妙な年代なんですよね。2100年とかだったら違うんでしょうけど…2055年て中途半端なんですよね

 ) 40年後ですね

 ) そうそう。もしかしたらこういう未来もありうるんじゃないかっていう。でもなんとなくもっと高度化された未来っていうのを、みんなもそうだと思うんですけど、僕は想像してて。だから(もっと高度に進化していると考えて観ると)パソコン古いですよね、あんなの、変わってないじゃん

 ) わざわざ古いままにしなくてもいいんじゃないかっていう

 ) モニターがいっぱいある(だけ)っていう。そんなに、特に、2055年感は一切ない

今 ) システムが火を噴くとかねぇ(笑)。あんなのあり得ないでしょ

 ) ショートしちゃってる(笑)

今 ) そうそう、ショートして火を噴くとかないでしょう

 ) それでシステムの復旧に時間が掛かるっていうのもちょっとなぁっていう…色々苦しいところはありつつ、そういうもんなのかなぁって

 ) そうですね

 ) これって一応、何やってもイイみたいな場所なんですよね?

 ) あ、そうそう。「VICE(ヴァイス)」っていうその…

今 ) 警察がいないんですよね

 ) 無法地帯なわけなんですよね、要するに

 ) え、あのホテル内だけがってことじゃなくて?

 ) あれは会社兼ホテル兼…あの一角がブルース・ウィリスの城なわけですよね、あの一角が

公式HPより引用©2014 GEORGIA FILM FUND TWENTY-EIGHT,LLC


 ) で、警察も買収して、無法地帯なわけですよね。だから何やっても許されるわけですよね

 ) あの(夜の)12時になったら家帰れみたいなの、あれなんスか?

 ) フフッ(笑)

 ) え?何それ?

 ) 家帰れっていうか、あれ記憶があの…

今 ) 殺されちゃった人の記憶がリセットされちゃう

 ) そう、レプリカントの記憶だけはリセットされちゃう

 ) あー、そうそう、設定をね

 ) でも12時って早くね?って思いますよね

 ) 12時で再起動ってことですね

 ) 無法地帯感ぜんぜん無かったですね。最初はそこをもっと見せるべきだった

 ) もっと、やるならってことですよね。それを完璧にブルース・ウィリス筆頭の社員たちがギリギリの所で押さえているという…

 ) や、最初にもっと楽しそうな感じを見せた方が(良いかなと)…

 ) あ、楽しげな感じね、テーマパーク的な?

今 ) リゾートな感じではなかったね

 ) そういうんじゃなかったですね。もっと欲を吐き出す的な、快楽を超えた…あと殺人もなんでも良いっていう

 ) そういう意味では『トゥモローランド』(※5)と同じじゃないですか

 ) あー

 ) おー!

 ) なんでも叶うみたいな

 ) うんうん

今 ) あ、『コードネーム:プリンス』(※6)ってやつ…

 ) えっ?この監督の前作ですか?どういう…?

今 ) ヒューマントラスト(※7)の「未体験ゾーン」(※8)でやってたんで。それもブルース・ウィリスがちょい役で出てる

 ) へぇー

 ) へぇー、仲良いのかな?

今 ) それで出て貰ったんじゃないですかね(笑)

 ) どーゆー話なんですか?

今 ) どういう話だったかな?えーと、殺し屋がなんか…えーっとね、(観てから時間が)経ってるから…

 ) 同じ感じなんですか?近未来的な?

今 ) いや、近未来じゃなくて、殺し屋が出てきて…話はちょっとド忘れしました、すみません(笑)

 ) まぁ、でもブルース・ウィリスとはそれで関係があると…

 ) そういう(未体験ゾーン的な)1本であるはずですよね。なんで普通に劇場公開なんだっていう感じなんですけど…

 ) ああ、そうだよねぇ。テレビシリーズの番組のああいうテイストみたいに感じましたけど。シーズン何とか、あるじゃないですか?

今 ) ?

 ) ?

 ) ?

 ) …まぁ見事に続編が出そうな感じでしたけど…

 ) ああ、最後の…

今 ) 最後、目を覚ますところ

 ) 「ジェダイの逆襲」(※9)じゃないけど、「レプリカントの逆襲」みたいな。そういう映画始まるんですか?

 ) 始まるんスか?

 ) わかんない…

 ) ぜんぜん期待感ないんですけど(笑)

今 ) 笑

 ) そうですね……あとクローンじゃなくて、レプリカント?

今 ) レプリカントっていうね、人造人間ね

 ) えっと、『ブレードランナー』?

今 ) 『ブレードランナー』かな?

 ) それもレプリカント?

今 ) うん、レプリカントですよね

 ) クローンじゃないんですよね

 ) 結局レプリカントの逆襲っていう話じゃなかったですかね?

 ) あ、途中からそうなりましたね

 ) だから逆襲は終わったんじゃないですかね

 ) あ、逆襲終わったんだ。あ、わかった、じゃあ、今度は「レプリカントの逆襲」じゃなくて人間の…

 ) あ、なるほど、『猿の惑星』(※10)みたいな?

 ) そうそう、今度はそうだよね。間違ってた。最初は人間と…組織と警察って言うのがあって、(その人たちが)レプリカントを押さえてたのが、レプリカントが逆襲して…で、実はまだ(逆襲したのに人間が)生きてた、っていう感じでね?

 ) 結局あいつ(ブルース・ウィリス)人間なんですか?

 ) いや、それは分からないんですよねー

 ) でも最後に撃たれてたよね、思いっきり

 ) こいつ(トーマス・ジェーン演じる刑事)は人間ですか?

公式HPより引用©2014 GEORGIA FILM FUND TWENTY-EIGHT,LLC

 ) これは人間。刑事役はね。でも一番面白かったのはラストシーンで、あの、ケリーが…(笑)。最後オールバックになってアップグレードバーションで出てきて…

 ) そこ、むちゃくちゃ面白かった(笑)

 ) 分かりやすい(笑)

今 ) 笑

 ) 「そこですか」みたいなね(笑)。スーパーサイヤ人的な感じで(笑)

今 ) 笑

 ) 笑

 ) 笑

 ) その組織をやっつけたら、最後、(スクリーンの)画面の端っこにいた女の人が、男をボコボコにしてるっていう…あれはもうゾンビすよね…笑っちゃいました(笑)

 ) レプリカントの逆襲でしたね…!

 ) (今泉に向かって)どうですか?

今 ) いや、なんかぜんぜんリゾートとか楽園に見えなかったから…

 ) そういう意味で「デッド・シティ」

 ) 邦題なんですね、これ

 ) そうですね。なんでデッドシティかって…そのまんまでしたね。(原題の)“VICE”ってどういう意味なんですかね?(※11)

 ) どういう意味なんでしょう?

 ) (キャッチコピーを見て)リゾート都市って書いてありますよ、ここには。「あなたの欲望をすべて叶える近未来都市ヴァイス」

今 ) 『マイアミ・バイス』(※12)のバイス?

 ) (常川に向かって)どうですか?

 ) うーん、なんか、この人…ケリーが、なんか(ある役の)元奥さんみたいな感じで…で、(自分の昔の)写真見て「コレ私?」みたいなことやってたじゃないスか?

 ) うんうん

 ) なんか…顔ちげーなって…

 ) 違った?(笑)

 ) あ、顔が違う?

 ) いや、なんか…(写真に写っている顔は)化粧してない顔みたいな。そこら辺の記憶はあるんだなって。そこら辺の記憶まであるのがちょっとよく分からなかった

 ) 奥さんは、(レプリカントの)デザイナー?の奥さんで、死んだんでしょ?殺されたか死んだかで。(奥さんのことを)忘れられなくて、個人的な趣味で作ったんでしょ?奥さんを。それがこれの設定でしょ?それ、まるまる新しいコピーロボットなんでしょ?レプリカントって。

 ) あと、なんか最初の方で本物の人体の皮膚使ってるみたいなこと言ってたから、だから奥さんそのまま使ったのかな?と思って、結構えぐいことしてるなって

 ) それヤバイですよね。機械じゃないって言う

 ) そこら辺の細かい設定もよく(どうなってるのか)わからなかったですけどね

 ) 生身の人間に人工知能埋め込んだのかな?どうなんでしょう?記憶が残ってるっていうのもねぇ

今 ) あと車の上に(2階以上の高さから)落ちても死なないのに、何で首絞められたくらいで死ぬのかも分からなかった

 ) 確かにあれは、生身の人間では絶対あり得ないですね

 ) あとみんな怪我しないですよね

 ) あ、そうそう、血が出ないっていう

今 ) 血が流れてない

 ) レプリカントは生き返るから殺してもいいみたいな括りなんスか?

 ) あ、法律がってこと?この人(ブルース・ウィリス)のリゾート都市VICEの中ではオッケー

今 ) レプリカントには何してもイイと

 ) で、(VICEの)外に出たら、逆に犯罪を犯さないだろうってことでVICEを作ったんでしょう?VICEの中は無法地帯だけど、外に出たら罪悪感を知るから…だからVICEは良いもんだって思って作ったけど…(刑事は)ぶざけんなっていうね。結局、でも外に出ても…殺人鬼は生まれるわけですよ。VICEによって。で、外の世界に行って実際、事件を起こして…で、こいつ(刑事)は気に食わんっつって。(VICEに)乗り込んで…殺されるっていう…あ、死んでないか?

 ) 死んでない

今 ) 死んでない

 ) 勝手に殺しました…あ、撃たれたけど生きてましたよね。平気な顔して歩いてましたけど。でも一応血が流れてた

今 ) 笑

 ) 笑

 ) 笑

 ) (ポスターを見て)で、こういう構図なんですよね、見事に、三角関係

公式HPより引用©2014 GEORGIA FILM FUND TWENTY-EIGHT,LLC 


 ) ココが(刑事とレプリカント)手を組んでこの暗黒卿(ブルース・ウィリス)をやっつけるっていう…はずだったけど…復活、みたいな?

 ) めっちゃあっさりでしたよね、最後

 ) そうですね

 ) これで終わんだ?みたいな…

 ) (栗田に向かって)どうですか?

 ) えっ?

 ) まとめてください

 ) えっ?まとま…るかなこれ、難しい気が…いやー…そうですね…

 ) 感想でも

 ) え、感想?感想……ひさしぶりに(映画を観ている)途中で眠くなりました…ウトウトしちゃいましたね

 ) はい、じゃ、今泉さん

今 ) うーん、別に続編は観なくていいかなって感じかな

 ) …じゃ、常川さん…

 ) これ以外にも劇場公開する(べき)映画あるのに…

 ) (続編)観たいの?

 ) いや、これじゃないヤツでもっと劇場公開して欲しいのいっぱいあんのに…

 ) なるほど

 ) ああー、確かに。何故コレをっていう?

 ) そう、何故コレを普通に公開してんだろ、日本…

今 ) 『コードネーム:プリンス』って今、調べて思い出したんだけど

 ) え?はい

今 ) ブルース・ウィリスがマフィアのドンなんだけど、それをある殺し屋に奥さんと子供を殺されて、それを追いかけるっていう話。でもブルースは主役じゃなくて、追いかけられる殺し屋の方が主役

 ) あ、そうなんですか。(ブルースは)主役じゃない。へぇ、じゃ、次回はそれを観るということで…

今 ) いや、「未体験ゾーン」のやつだからもうやってなくて…

 ) どうせだったらこの人(ケリーを指差して)上着を着てないほうが良かったですよね。途中で着ちゃったから……ってどうでも良いこと最後言っとこうかと

 ) ケリーちゃんね?もっと観たかった?

 ) なんか、反撃開始したときに、タンクトップみたいな(服装だったのに)…でも逃げるとき上着ちゃったんですよ

 ) うんうん

今 ) あと技術者の人たちが建物から逃げるとき自主映画っぽい逃げ方だったなって(笑)

 ) えっ?

 ) きっと多分、そう言うノリ…(笑)

 ) ノリ?(笑)

今 ) 金の掛かった自主映画

 ) ……じゃ、これで…

 ) 終わり!?(笑)


※注釈※

(※1)『ブレードランナー』
1982年に公開されたアメリカのSF映画。フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作としている

(※2)『ロボコップ』
1987年に公開されたアメリカのSFアクション映画。『ロボコップ2』、『ロボコップ3』、およびリメイク版『ロボコップ(2014)』がある

(※3)『チャッピー』
2015年に公開されたアメリカのSF・アクション映画

(※4)『ダークナイト』
2008年のアメリカ・イギリス共作映画。バットマン実写映画版第6作目

(※5)『トゥモローランド』
2015年に公開されたアメリカのSFアドベンチャー映画

(※6)『コードネーム:プリンス』
2014年に公開されたアメリカのスリラー映画

(※7)ヒューマントラスト
渋谷にあるテアトル系列の映画館「ヒューマントラストシネマ渋谷」のこと

(※8)「未体験ゾーン」
ヒューマントラストシネマ渋谷で年に1度開催される特集上映企画「未体験ゾーンの映画たち」のこと

(※9)「ジェダイの逆襲」
『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』 『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』が混ざってしまった模様。『~ジェダイの帰還』は2004年までの旧邦題は『ジェダイの復讐』

(※10)『猿の惑星』
1968年に公開されたアメリカのSFアクション映画。ピエール・ブールによるSF小説『猿の惑星』を原作とする『猿の惑星』シリーズ全5作の1作目

(※11)VICE
悪,非行, 堕落行為,悪習,悪癖の意

(※12)『マイアミ・バイス』
2006年に公開されたアメリカのポリスアクション映画。1984年から1989年にかけてアメリカ合衆国で放映していた『特捜刑事マイアミ・バイス』の映画版


『デッド・シティ 2055』




監督/脚本:
制作年:2015年
制作国:アメリカ
配給:東京テアトル、日活

出演:トーマス・ジェーン、ブルース・ウィリス、アンビル・チルダーズほか


公式ホームページ:http://dead-city.net/

2015年1月8日木曜日

映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』クロスレビュー

「君の部族では夢は“未来”を告げるが、精神分析では“過去”を表すと考える。だから興味深い」

 予告編にも引用されている精神分析医・ジョルジュのこの言葉から僕が想像した映画の内容は、「近代合理主義と伝統的神秘主義の相克」といったようなものでした。

 心という実体のないものを自然科学的な手法で解明しようとする精神分析の考え方は、何でも理屈で割り切れる筈だと考える近代合理主義の産物に他なりません。一方、夢を未来の暗示と捉えるアメリカ先住民の考え方は、科学的な視点からは不合理と見なされますが、彼らの生活文化の中ではこうした考え方が実際に有効で、暮らしの役にも立って来たという歴史があります。理屈に合わない筈の先住民の言葉が真理の一端を明かしていることを無視出来ず、価値観を揺さぶられる精神分析医……そういう内容の映画なら確かに「興味深い」。

 でも実際の話はそうじゃありませんでした。

 この作品がニューエイジ・ムーブメント以降の視点で作られたフィクションだったとしたら、そんな話になってた可能性もあったのでしょうが、これは西洋近代へのカウンターとしてニューエイジ思想が台頭した60年代より遥か以前、1940年代に実際にあった実話を元にした物語です。医師ジョルジュは自分の信じる精神分析の手法で迷うことなく患者ジミーの治療に当たり、(簡単にとまではいかないものの)着実に成果を上げていきます。心理療法やカウンセリングを題材にした作品ならありがちな、患者の医者への反発、それが信頼に変わり寛解へ至る、というような分かりやすいドラマもここにはありません。患者であるジミーは至って素直に治療への試みを受け入れますし、他の病院関係者も基本的には良心的かつ協力的。その波乱のなさが少し物足りなくも感じられましたが、それも仕方ない。実話なんだから。

 むしろ外界の穏やかさに反して、ジョルジュとの対話によって自らの幼少期へと記憶をさかのぼる旅をしたジミーの、その心の中にこそ波乱はあった訳ですが、のっぺらぼうを出してみたり、原野を花で埋めてみたりとそれなりに手の込んだことしてるにも関わらず、その語り口が大げさだったりサスペンスに傾きすぎたりしないのは、やはりフランス人監督のエスプリなのかなと思ったことでした。ジョルジュの愛人が、人間の心と魂と身体の関わりをマトリョーシカになぞらえて話す場面なども、機知に富み、かつ美しい場面として印象に残りました。


★★★★☆
(落合 尚之)

---------------------------------------------------------------------------------

精神分析医を名乗る(元々は人類学者)ジョルジュが、第二次大戦中の戦傷による頭痛や視力障害、難聴などに悩まされている「アメリカ・インディアン」であるジミーの夢診断をするのだが、その解釈が楽しい。観客はこのジョルジュという人物の視点(解釈)に誘われることで、次第に明らかになっていくジミーのトラウマと向き合っていくこととなる。

淡々とした単調な対話劇にもなりかねないこの映画が私にとって思いのほか好ましく感じられたのは、ジョルジュがジミーを分析しようと向き合うこの態度というものが、我々が映画を観るという行為あるいはスタンスに近いように思えたからかもしれない。ここでいう我々とは、映画と接することで何かを見出そうとする人たちのことだ。つまり、画面に映る(他者により表現された)事象を自分なりに解釈するという「観る」行為も、ジョルジュがジミーの語る夢から彼の深層心理に隠されているかもしれない心の傷を診断分析する行為も、提示されたイメージから何か意味を見出すことであるはずで、それを通して学び、自己を見つめ直すことにつながる経験であるのではないか(と考えていたら、フランス語で俳優が演技することを意味する“interpreter”には、解釈する、精神分析をする、映画批評をするなどの意味もあるそうだ)。

ジミー(インディアン)とジョルジュ(ハンガリー系ユダヤ人)という、デコボコで血のつながっていない二人が対話と解釈により互いに学び合い、友情を育み、擬似家族のようなつながりを構築する過程には、彼らが自身のルーツ(映画オリジナルの登場人物であるという、ジョルジュの愛人マドレーヌが人類博物館━━人類のルーツを語り継ぐ場所━━の職員であることも見逃せない)を見つめ直していく姿が映されている。だからこそ、ジミーが下すにいたる晴れ晴れとした決心は、さりげなくも味わい深い余韻をもたらすのである。


★★★☆☆
(常川 拓也)

---------------------------------------------------------------------------------

原作は本作にてマチュー・アマルリックが演ずる文化人類学者”ジョルジュ・ドゥヴルーの著作による「夢の分析・或る平原インディアンの精神治療記録」を元にした実話である。

第二次世界大戦に於いて負傷し、退役したインディアンである元軍人”ジミー”(ベニチオ・デル・トロ)は戦後アメリカのモンタナに住み、原因不明の病に悩まされていたが、州の病院では治療できないと判断された為、カンザス州にあるメニンガー・クリニックへ赴き治療する事となった。「頭蓋骨の骨折」にからくる精神病と判断されるが、メニンガー・クリニックでは、治療方法が見つからず、インディアンを研究する文化人類学者であるジョルジュがジミーの専任医師として召喚される。ジョルジュはジミーの生い立ちから最近見る夢に至るまで、毎日一時間ずつカウンセリングを行う。ジミーとジョルジュは病の原因の糸口すら、はじめは全く掴めずにいた。しかし、夢の話や、互いの心に抱える闇を徐々に共有していく過程で、互いに心を通わすようになっていく。

「頭蓋骨の骨折」からくる外的要因による病気と判断され、治療を施す病院に対し、ジョルジュは「夢」やジミーが描く「絵」、そして何よりも、話し合いを重ねていく事でジミーを自然に病から解放していく様に心を動かされる。ジミーは恐ろしい夢にうなされ続けるが、次第に美しい草原に広がる、色とりどりに咲き乱れる花の景色を見るようになる。青白く、そこに居るだけで気が滅入ってしまいそうな病院から、感情の動き=色彩を取り戻したのだ。


本作が鑑賞者の胸を打つのは単に「ジミーの苦悩からの解放」を描いた「記録」だけに留まらず「ジミーとジョルジュの魂の交流」を丁寧に描いている所にある。特に二人の微細な気持ちの変化を、ゆっくりと流れる時間と共に描写していく点が最も興味深い。


★★★★☆
(小川 学)

————————————————————————————————————————————




『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』

監督
アルノー・デプレシャン

脚本
アルノー・デプレシャン

原案
ジョルジュ・ドゥブルー

エグゼクティブプロデューサー
モリー・コナーズ 、 ベン・リンバーグ 、 クリストファー・ウッドロー

プロデューサー
パスカル・コーシュトゥー 、 ジェニファー・ロス 、 グレゴリー・ソーラ

撮影
ステファーヌ・フォンテーヌ

プロダクション・デザイン
ダイナ・ゴールドマン

音楽
ハワード・ショア

編集
ロランス・ブリオー

衣裳デザイン
デイヴィッド・C・ロビンソン

キャスティング
アヴィ・カウフマン

キャスト
ジェームズ(ジミー)・ピカード : ベニチオ・デル・トロ
ジョルジュ・ドゥヴルー : マチュー・アマルリック
マドレーヌ : ジーナ・マッキー
メニンガー医師 : ラリー・パイン
ホルト医師 : ジョゼフ・クロス


作品情報:「クリスマス・ストーリー」のアルノー・デプレシャンが、実話を基にアメリカで撮影したヒューマンドラマ。心に傷を負ったネイティブアメリカンとフランス人精神分析医の親交が導く静かな奇跡を描く。出演は「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳別れの手紙」のベニチオ・デル・トロ、「さすらいの女神(ディーバ)たち」のマチュー・アマルリック、「ひかりのまち」のジーナ・マッキー。


公式ホームページ:http://kokoronokakera.com

2015年1月10日(土)より、渋谷シアターイメージフォーラムにて公開。

2014年12月22日月曜日

映画『ベイマックス』クロスレビュー


ドラえもん、ターミネーター2、逆襲のロボとうちゃん(クレヨンしんちゃん)に至るまで、古今東西、少年とロボットの物語は掃いて捨てるほど作られてきたのに、またロボットものですか……もうそんなにパターンないだろ……と思っていたけれど、この映画が迎える一つの臨界点に息を飲んだ。兄が遺したロボットとともに、敵を討つ――その先に、やわらかケアロボット・ベイマックスならではの展開がある。高まった観客の興奮にも、突き放すような言葉が投げかけられる。「人殺しには同意してない」
 たとえ戦闘用ロボットでなくとも、ヒトはどういうわけかそれをごく当たり前に、殺人のために使おうとする。『ベイマックス』はそんな「当たり前」にチクリと注射する映画だ。果たして、狂気に駆り立てられた少年は他人の痛みを知り、赦すことができるのか――。ただ、その問いかけに対するアンサーをこの映画がちゃんと提示してくれているのかどうか僕にはどうも確信がなくて、ごまかされたような気もする。だって、生みの親の真意に反して武装させられたベイマックスは、素材そのものの味を奪われた料理みたいに、なんとも残念なかんじがする。「お前、そのままの姿がいちばんだよ」と声をかけたくなる。優しさで世界を救うのって、難しいんだなあ。この胸のもどかしさこそ、10段階評価してベイマックスに教えたい。

ベイマックスの質感 ★★★★
(沖田 灯)
----------------------------------------------
〝Big Hero 6〟としての『ベイマックス』

『寂しいとき、一緒にいて欲しい人は誰ですか?』って、そんな話じゃないだろうがッ!
少年少女の為の科学オタクヒーロー映画だろうがッ!
脳みそマシュマロかッ!
と、現在の私はテレビ前で日本版の予告が流れる度に憤慨している。

本作は暴力で問題は解決されないと言うこと、悲しみに振り回されないこと、自分の持っている力によって問題を解決すること、といった如何にも教訓めいた話を笑いとアクションのミックスによって説教くさくならないようポップに仕上げている快作だ。

確かに日本版の予告のようにほのぼのとしたベイマックスや友達との繋がりと癒し、と言うものも描かれている。けれど、ただ仲良しこよしをやってるだけではなく〝仲間・チーム〟になるっていうのはどういうことなのか?を投げかけてきている。
それは優しさだけでは補いきれないものなのだと、意見の不一致であったり、時には自らの誤ちだったりを素直に受け入れることによって〝友達〟から〝仲間・チーム〟にもなれる。
そこを乗り越えたその先に1人の人間としての成長があり、また違った問題に立ち向かうことが出来るんだと、そんなことを優しく語りかけてくる。言葉を使わずに。あのフワフワのベイマックスを通して。

これは子供たちに見せるべき映画の1つだと思う。
良い子のご両親たちは妖◯ウォッチよりこっち見せた方が今後の子供たちの成長の為に良いと思われます。
◯怪ウォッチは見た事はないけれども。

ベイマックス欲しさ度:★★★★
(くりた)

海外版予告編をどうぞ↓ 



----------------------------------------------

「ベイマックス、胸が痛いよ、、、。」



医療ロボ「ベイマックス」。彼の優しさが心に染み入ります。この映画を観て良かったなあ!と素直に思いました。もし自分に子どもがいたら一緒に観たいと思いました。

2XXX年、ハンペン型医療ロボット「ベイマックス」。彼の歩き方がとにかく好き。ぽてぽて、ぽてぽて、と歩きます。中身は空洞?なので重心が軽いのです。見た目は大きいけれど、気は優しい。どこかロボット特有のすっとぼけた所があって、それはとても愛くるしいです。(この既視感は、となりのトトロでした)

「ベイマックス大丈夫だよ!」と言って合図を出すまで、彼は人間を気遣い、心配し、あらゆる外的から守ってくれます。彼は「ぎゅっと抱きしめられたくなる気持ちにさせられるように」設計されました。ベイマックスを抱きしめたい!という人は結構多いんじゃないかな??

ベイマックスは主人公のヒロのお兄さんであるタダシによって設計されました。ヒロは決して癒えない、ある大きな悲しみを抱えてしまいますが、物語が進むに連れ、ヒロはベイマックスのおかげで傷心から立ち直る事ができます。

ベイマックスはロボットなので、ヒロの「心の傷」を直接、治療する事はできませんが、あらゆる手段を用いてヒロを優しさで包み込んでくれたのです。

いろいろな映画へのオマージュや、機械の発達、物質主義、現代文明への危惧、軍事利用への批判、など、見所要素が随所に詰め込められている映画である所も見逃せません。

僕はディズニー映画を何年かぶりに観ましたが(アナ雪すら観ていないという、、)しかし、この映画は自分と同じように、普段ディズニー映画を見ない人へ、特にオススメしたいと思いました。

「ベイマックス、もう大丈夫だよ!」

ベイマックスの温もり:★★★★
(小川 学)

/2014/12/22/pm7/新宿ピカデリー/日本語吹き替え/ほぼ満員

——————————————————————————
日本語版予告編をどうぞ↓



監督 : ドン・ホール / クリス・ウィリアムズ

製作 : ロイ・コンリ
製作総指揮 : ジョン・ラセター
脚本 : ロバート・L. ベアード / ダニエル・ガーソン
ヘッド・オブ・ストーリー : ポール・ブリッグス
プロダクション・デザイン : ポール・フェリックス
音楽 : ヘンリー・ジャックマン

作品情報かけがえのない大切な人を失った時、ぽっかりと胸にあいた穴はどう治せばよいのだろうか。最愛の兄を失い心に深い傷を負った14歳のヒロの前に現れたのは、何があっても彼を守ろうとする一途な<ケア・ロボット>ベイマックスだった。
 日本とサンフランシスコからインスピレーションを得た架空都市サンフランソウキョウを舞台に、壮大なスケールで描かれる二人の絆の物語は問いかける―「優しさで世界を救えるか?」と。素晴らしい奇跡が起こるその瞬間を、ぜひ大切な人と一緒に・・・。
ディズニー史上いまだかつてない優しすぎるロボットと少年ヒロの絆を描いた感動のアドベンチャー『ベイマックス』が、日本中を限りない優しさと感動で包み込む。

公式ホームページhttp://www.disney.co.jp/movie/baymax.html

映画『アオハライド』クロスレビュー


冒頭と終盤で、「青春」に関するモノローグを背景に、本田翼が真逆の方向に走るシーンが出てくる。冒頭は明るい春の登校風景だが、終盤は真っ暗な夜道。青春=アオハルとは、きらびやかに見えて、闇の中を駆け抜けるようなものなのだ。
 5人の男女の恋愛と友情が描かれるが、どうしてこの5人が結びつき、友情を育くんでいくのかきちんと描けていないようにも見える。たとえば、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』だったら、いがみ合う者たちが仲間になる過程が紛れもないものとして描かれていたからこそ、結束に説得力があった。本作の序盤で、本田翼が東出昌大に「これでも友だちごっこだと思うの?」と、反語的な意味で問いかける場面があって、僕は「完全に友だちごっこだろ!」と思ってしまったのだけど、考えてみると、それこそがノスタルジーでない現在進行形の友情とか青春の姿なのかもしれない。オトナ同士が仲間や友だちになるためには、桃太郎のようにエサを与えたり、『ガーディアンズ~』のように痛みや境遇を共有しなければならないけれど、青春にはそんなもの必要ないのだから。偶然同じクラスになったというだけで、かけがえのないものを形成したり失ったりする特別な時間なのである。トラウマを抱えた東出が、現在を共に生きる人=本田翼と、過去の痛みを共有する人=高畑充希の間で揺れる物語でもある。友情は大切だけど、5人の輪の外にいる人たちのことも、物語上のスパイスとしてではなく描いてほしかった。

高畑充希の迫力:★★★★★
(沖田 灯)
--------------------------------------------------------------------
「これも友達ごっこ?」と訊かれれば「うん、そうだね」としか言えないし、主人公一派による修学旅行の私物化はいくら何でも酷すぎると思う。変更前のルートを楽しみにしてた生徒だっているだろうに…。この映画の八割方を僕は首を傾げつつ見ざるを得ませんでしたが、にも拘らずトータルでの感想を訊かれれば、残り二割の為に嫌いになれない、むしろ好き。
その二割とは、長崎の風景、そして主演の東出昌大くんです。

母親の死と共に自分の人生を生きられなくなってしまった少年・洸は、事実上死んでいるに等しい、謂わば冥界の住人であり、彼を愛する少女・双葉は彼の魂が留まっている冥界=長崎へ赴き、彼を生ある世界に連れ戻そうとする。この話はイザナギ・イザナミの神話や、オルフェウスとエウリュディケーの伝説と同じく、死んだ恋人を現世に連れ帰ろうとする冥府下りの物語の系譜に連なります。映画に描かれた長崎の街景、無数の家々が斜面を埋め尽くす、どこか非現実的で異世界めいた光景は、実は彼岸の光景なのであり、二人が登った長い坂道は、あの世とこの世を繋ぐ黄泉平坂に他ならない。イザナギもオルフェウスも共に男で、恋人の救出に失敗しますが、この作品の主人公は少女であり、まんまと少年を救い出す。それがこの新しい神話の現代性であり、少年が彼女を「ヒーロー」と呼ぶ所以もそこにあります。
ただし作劇的にも人物造形的にも、主人公を「ヒーロー」として成立させられているかという点については疑問が残ります。むしろ映画は「ヒロイン」としての少年・洸=東出昌大の可憐さによってのみ支えられている、といっても過言ではない。冒頭、神社での雨宿りの場面。「急に降って来たよね」の言葉とともに、無表情を装いながらも分かるか分からぬか程度にうっすら緩められる表情筋の動き。かつての少年が鉄面皮の下に今も息づいていることを知らせるその笑みに、一瞬で心を掴まれます。以降ひたすら東出くんの男の色気に当てられ続ける120分。こんな色っぽい高校生がいてたまるかとは思いつつ、彼の一挙手一投足にキュンキュンさせられっ放し。教会の場面ではベタだとは分かっていながらも落涙を禁じ得ず……母子ものの泣かせの手段としてはベタもベタですが、ベタであるとは即ち普遍的で強いということ。そしてやはりここでも胸を打つのは、必死に一人で重荷を抱え込んで来た洸の孤独や自責や強がりがぼろぼろと崩れ落ち、柔らかい少年らしさが露になる、その健気さといじらしさです。それらは歴史上長らくヒロインの資質と見なされて来たものではないでしょうか。東出くんの好演あってこそ、ベタでも素直に泣けました。

かっこいいけどさすがに高校生には見えないので:★★★★☆
(落合 尚之)
--------------------------------------------------------------------
「どうしても『アオハライド』見て、チューしたくなったらぁ、お前にチューする」。そんな高校生男子のやりとりが上映前に隣から聞こえてきた。『アオハライド』は、青春(アオハル)にライドしたいティーンエイジャーのための映画である。さて、本田翼が猛烈にかわいいという一点のみで興味を持ったが、過剰なまでのわかりやすさで作られた、何か解釈する余白がゼロの映画だと思う。本田翼が何を考えているか、心の声は懇切丁寧にモノローグで語られ、過去にどういうことがあったか回想で親切に教えてくれる。全員セリフで思っていることを説明してくれる(ウジウジ悩んだりしない!)。本田翼の前から急に姿を消した中学時代の初恋相手(東出昌大)は空白の4年間に何があったのか──それについても次から次へと明かしてくれ、どうも物語にサスペンスの働きが作用せず求心力を持たない(故に、まだ終わらないのかと長く感じる)。全編において脇役は都合のよい脇役でしかなく、すべての人物は極めて一面的である。主人公の美男美女のためにここでの世界はあり、主に本田翼に共感、感情移入させるために全員その引き立て役を演じているのである。高校という狭いコミュニティでの共感でストーリーを引っ張っているのだ。共感の時代で求心力を持つのは共感の映画なのだなぁと思わざるを得ない。同級生との薄っぺらい人間関係の中で本田翼が本音を言う場面では、教室にいる全員が凍りつき静かになる。みんなこの陳腐なラブストーリーを成立させるためにそれぞれの役割を演じているため、観客は安心して感情移入する。安心したい、共感したい、そんな時代の映画なのだろう。人物が多面的に描けてないし、モブは棒立ち、セリフも棒読み(特に東出昌大はひどい)で演技を引き出せていない、物語だってご都合主義でしかないだろう。頭のお固い年寄りはこれらを批判するかもしれないけれど、そんなものは本田翼の超絶キュートな笑顔の前では無意味だ(かわいい子ばっかり出てくるよ)! というか、薄っぺらいことの何がいけないと言うのだ!  そもそも「青春(アオハル)」の恋愛にまつわることなんて薄っぺらく恥ずかしいものじゃないか。ノスタルジーに浸ったジジババは置いておいて、アオハライダーたちでこの青臭くチープなお伽噺めいた少女映画を楽しもうじゃないか。上映前や後にあちこちで見られた場内で自撮りする十代男女たちの光景はまさしくちょっとした「アオハライド」だった。ティーンのためにある映画において、人懐っこい笑顔で魅了する「FINE  GIRL」には、いつだって予めハッピーエンドが用意されていなくちゃいけないのである。

本田翼のかわいさ:★★★★★

(常川 拓也)

----------------------------------------------------


「青春はいつだって間違える、でもだからこそ青春なんだ。」

文字化して改めて見るとなかなか?な台詞だが、鑑賞後は妙に清々しく、納得できると思った。
ところで?「セイシュン」って?なんだっけ?とも。。。。
とにかく全てがボヤけている映画である。カメラのピントが合う先にはただ一人。洸(東出昌大)だけが静かに佇んでいる。洸を見つめているのは双葉(本田翼)、この映画においては彼女の視界だけが拡がっていくのみだ。双葉の視線に気付かないフリを装い、巧妙に双葉を蜘蛛の巣に引っ掛けるぶっきら棒な男、洸。君は確かにかっこいい。かっこいいぞ!「①背が高い②正義感に溢れる③常に遠くの空を見つめている」それだけで、十分なのだ。演技も、長い台詞も、派手な立ち回りも必要ない。でも、洸の視線の先の空は、常に空っぽのようにみえる。それを空虚と言う人がいるかも知れない。雲は水蒸気である。
身長が高い、無口、猫背、且つ、その無言の背中に謎を醸し出している男には、何故だか決まって教室の窓際に席が用意されている。そして、まるで約束されたかのように、彼等は窓の外をボンヤリと見つめている。遠い目をして肩肘なんか付いていたら尚のこと最高である。そんな洸が双葉はいつも気になって仕方がない。学校、屋上、校庭、部活、夏祭り、浴衣、全ては彼等、彼女たちに用意された方程式なのである。あとは、彼らがいかに答えを導き出していくか、さて、そこがテストの問題である。
青春とはなんぞや?そんなことを考えてしまったら途方もない。「そういう事はジジババになってから考えればいい」という台詞があった。「なるほど、そうなのか。じゃ、俺はまだ考えなくていいのだろうか?」などと考えながら兎に角ビールでも飲んで早く酔っ払いたい気持ちになった。いや、実際こそばゆいっすよね。青春って恥ずかしいっすよね。
上映後の場内を見渡すと、観客ほぼ全てが10代と思しき若人ばかりであった。彼等は月末月初の支払いも、年末の忘年会での接待役に頭を悩ます必要もない。目の前にただ広がる「青い空」を見つめていれば良いのだ。
「青春はいつだって間違える、でもだからこそ青春なんだ。」

東出嫉妬:★★★★

(小川 学)
————————————————————



  • 監督 - 三木孝浩
  • 脚本 - 吉田智子
  • 音楽 - 林ゆうき
  • 主題歌 - いきものがかり「キラリ」
  • 製作 - 市川南、岩田天植、渡辺直樹、弓矢政法、吉川英作、高橋誠、宮本直子
  • エグゼクティブプロデューサー - 山内章弘
  • 企画プロデュース - 臼井央、春名慶
  • プロデューサー - 川名尚広、大西孝幸
  • プロダクション統括 - 佐藤毅
  • 撮影 - 山田康介
  • 美術 - 花谷秀文
  • 録音 - 豊田真一
  • 照明 - 川邊隆之
  • 編集 - 坂東直哉
  • 助監督 - 府川亮介
  • 製作担当 - 藤原恵美子
  • 製作プロダクション - 東宝映画
  • 配給 - 東宝
  • 公式ホームページ: http://www.aoha-movie.com/index.html