2017年3月12日日曜日

【映画イベント紹介】「第9回ちば映画祭」text大久保 渉



 「恋文」


大好き。
ちば映画祭。

今年で9年目を迎える、“千葉県初上映”の“若手監督”の上映作品がメインの映画祭”。
JR千葉駅から徒歩8分のところにある、約300人を収容する千葉市生涯学習センターの大ホールで開催される映画祭。

――ぼくらの好きな映画を 一緒に見て欲しい お金とかそういうんじゃなく 純粋な気持ち――

ちば映画祭のオリジナルテーマソングの中でとりわけお気に入りなのがこの一節。このフレーズがずっと耳に残り続けるから、私は毎年遠路はるばる千葉県まで行ってしまうのかもしれない。

たとえ耳にしたことのない作品がプログラムされていようとも、楽しめるかどうか、そこは全く心配していない。

なぜなら、ちば映画祭が発する「この映画が好き」はとても力強くて、観ると絶対に体と心がむんむんと火照ってしまうと分かっているから。

今年の特集は、大河原恵監督。一昨年のぴあフィルムフェスティバルや下北沢映画祭等、国内の映画祭コンペティション部門で物議を醸した快作『みんな蒸してやる』の他、多摩美術大学造形表現学部在学中ならびに卒業後に製作した彼女のイマジネーション溢れる短編が4本上映される。

『みんな蒸してやる』


『母がる』

その他、映像の詩人・杉田協士監督の短歌を原作にした映画『自販機の光にふらふら歩み寄り ごめんなさいってつぶやいていた』『100円の傘を通してこの街の看板すべてぼんやり光る』のプレミア上映、ポレポレ東中野にてロングラン公開されたいまおかしんじ監督の『あなたを待っています』、第69回カンヌ国際映画祭ショート・コーナー出品、第31回オーデンセ国際映画祭2016コンペティション部門ノミネートなど海外での上映も多い田中羊一監督の『ピンパン』や、


『自販機の光にふらふら歩み寄り ごめんなさいってつぶやいていた』

『あなたを待っています』(c)ハリケーン企画2016

『ピンパン』(c)DEEP END PICTURES Inc.


ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2016にて準グランプリと日本映画ペンクラブ賞他を受賞し、カナザワ映画祭2016期待の新人監督観客賞など幾つもの映画祭にて話題をさらった『花に嵐』も上映される。

『花に嵐』

ただ、そんな「映画通」的な評価など知っていようが知っていなかろうがそれはそんなに重要なことではたぶんなくて、その場で観て、感じて、自分がどう思ったのか。それをそのまま製作者たちに直接聞いてみる。その機会が場内でしっかりと設けられているところに、ちば映画祭の居心地の良さを感じてしまう。

各回上映後にはキャスト・スタッフによるゲストトークが目白押しで、さらにはロビーでゲスト陣が観客たちの個別質問にたくさん答えてくれる。

そうしたところはゲストもちば映画祭の良さを知っているからこそ熱心に遠くまで来ているのかなと思える。

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭、高崎映画祭、田辺弁慶映画祭等ゲストと触れあう機会に恵まれた映画祭は他にもたくさんあるけれど、でもやっぱり、ちば映画祭はちょっと違う。コンペティション部門等を設けるのでもなく、観客にも来場ゲストにも「これを見て!」という好きな気持ちを特集上映というかたちで前面にぶつけてくるから、周りもその想いにのってしまう。

会場内はいつだって、ボランティアスタッフの輝く瞳と手作り装飾がきらめいていて、変顔のマスコットキャラクターがギャハギャハ賑やかしていて、上映を待つ間も、終った後も、気持ちがどんどん上がっていってしまう。

シネコンで流れるような大作や洋画はないけれど、でもちば映画祭にはちば映画祭のやりたい「映画」があって、心がわななく「映画」があって、それをとりまく人たちがたくさんいて、全力で、届けている。

――自分に嘘はつきたくない まわるフィルムの中で  世界どこまでも広がる ブザーが鳴り響く――

上映映画もそうだけど、あの場の熱い空気を吸いたいといつも思ってしまう。そしてまた一年、私も自分の「好き」を堂々と、思いっきりがんばろうと、強く心に、思ってしまう。

――初期衝動 忘れない――

今年も、本当に楽しみにしています。

好きです。

ちば映画祭。






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第9回ちば映画祭 

【開催概要】
<映画文化を広めたい!千葉県初上映の若手監督の作品上映>
千葉市のみならず千葉県初上映の作品、特に若手監督の作品をメインに上映。更に監督等との交流によってより広く深く映画に触れる機会の提供を目指す。魅力ある作品ラインナップで千葉県外の方々にもアピール出来る映画祭を目指す。

<千葉を盛りあげる!お客様が参加する映画祭へ>
地元・千葉の皆様がお客様として参加し、楽しめるイベントとして成長するべく、様々な趣向のイベントを企画。同時に千葉以外から来場されるお客様や監督には千葉の素晴らしさを知っていただきたいと活動する。

【プログラム】

≪3月18日(土)前夜祭≫
12:00~/樋口由佳監督『刹那の記憶』土井美奈子監督『夜明けごっこ』稲毛映画学校作品『車輪の下』『声の花火』『あいたくて』上映(入場無料)
14:20~/「映像で問う“日常の感度”杉田協士監督とWiCAN」~千葉アートネットワーク・プロジェクト(WiCAN)2016プロジェクト映像作品上映とトーク~(入場無料)
16:40~田中雅紀Special Live(入場無料)
17:40~杉作J太郎監督『チョコレート・デリンジャー』+トーク(※前売800円 当日1,000円)

≪3月19日(日)各回ゲストトーク予定≫
11:00~『イノセント15』(88分)+トーク
13:45~特集:大河原恵のピップ・パップ・ギー① ~野本梢監督と『私は渦の底から』(30分)『みんな蒸してやる』(41分)(計約71分)+トーク
15:55~特集:大河原恵のピップ・パップ・ギー② ~杉田協士監督と『襟売ってよ』(52分)『自販機の光にふらふら歩み寄り ごめんなさいってつぶやいていた』(35分)(計約87分)+トーク
18:15~特集:大河原恵のピップ・パップ・ギー③ ~ふたたび杉田協士監督と『100円の傘を通してこの街の看板すべてぼんやり光る』(予定40分)『母がる』(50分)
『逆流竹取物語』(13分)(計約103分)+トーク

≪3月20日(月・祝)各回ゲストトーク予定≫
11:00~『あなたを待っています』(74分)『ひとみちゃん』(10分)(計約84分)+トーク
13:15~13:45 チェアトーク(※1Fアトリウムガーデン/登壇者/千葉アートネットワーク・プロジェクト(WiCAN)代表・神野真吾(千葉大学准教授)、渡邊桃子(『私の窓』監督)、井樫彩(『溶ける』監督)
14:00~『私の窓』(41分)『溶ける』(45分)(計約86分)+トーク
16:20~『ピンパン』(15分)『夕暮れの催眠教室』(25分)『堕ちる』(29分)(計約69分)+トーク
18:25~『花に嵐』(76分)+トーク

【会場】
千葉市生涯学習センター ホール(千葉市中央区弁天3丁目7番7号)
(JR千葉駅千葉公園口、東口または北口 / 千葉都市モノレール千葉駅から徒歩8分)

【公式HP】
http://www.chibaeigasai.com/


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【執筆者プロフィール】

大久保 渉:Wataru Okubo

ライター・編集者・映画宣伝。フリーで色々。執筆・編集「映画芸術」「ことばの映画館」「neoneo」「FILMAGA」ほか。東京ろう映画祭スタッフほか。邦画とインド映画を応援中。でも米も仏も何でも好き。BLANKEY JET CITYの『水色』が好き。桃と味噌汁が好き。

Twitterアカウント:@OkuboWataru

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