2017年3月13日月曜日

映画『お嬢さん』『哭声/コクソン』評text村松 健太郎

『お嬢さん』『哭声/コクソン』日本とディープに絡んだ重量級韓国映画連続公開!


鶴見辰吾がキム・ジウン監督の『密偵』、大杉漣がパク・フンジョン監督作『隻眼の虎』に出演し韓国国内で高評価を受けていることが話題になっているが、その流れの中でもひときわ高い絶賛の声を浴び、青龍賞助演男優賞と人気スター賞を受賞したのが『哭声/コクソン』の國村隼だ。

『哭声/コクソン』は『チェイサー』『哀しき獣』のナ・ホンジン監督の最新作で、それまでのバイオレンススリラーから一転してゴリゴリのオカルトホラー。

田舎町で連続殺人事件が発生、山奥にいる素性不明の日本人が来てからことがおかしくなったという噂が立ち始める。

最初は噂話だと相手にしなかった警察官も自身の娘に危機が迫ると謎のよそ者=国村準を疑い始め・・・。

國村隼の意外な正体、事件の真相、すべてが明らかになった後に訪れるどす黒さ、絶品です。

『哭声/コクソン』と前後して公開されるのが『オールドボーイ』などの復讐三部作で知られるパク・チャヌク監督の7年ぶりの韓国映画復帰作『お嬢さん』。とうとう行き過ぎて韓国では成人映画指定を受けて、日本でもR18指定に。

艶めかし過ぎる女性同士のラブシーンを含めた過激な性描写と見ているこちらも痛くなる暴力描写に目が行くがちであるものの、英国ミステリーの傑作サラ・ウォーターズの『荊の城』を韓国併合後の日本統治下(いわゆる日帝時代)の物語に翻案。

騙しあい(コンゲーム)を展開、二時間半の長尺であるものの、飽きさせる部分は一切ない絶品に仕上がった。

そして、メインキャストの韓国人俳優がほぼ吹替なしで日本語セリフに挑戦。その量は全セリフのほぼ半分。

さらに物語の後半の舞台は日本(九州から神戸)となっていている。

実際にパク・チャヌク監督の意図としては日帝時代では日本の文化にあこがれを抱いた人間たちも多くいたということ。

『哭声/コクソン』『お嬢さん』ともに“疑心暗鬼”をそのまま映画にしたような作品。

徹底的に人間不信なること間違いなしの重量級作品、必見。

(text:村松 健太郎)



『お嬢さん』
2016年/145分/韓国

作品解説
『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督が、イギリスの人気ミステリー作家サラ・ウォーターズの小説「荊の城」を原案に、物語の舞台を日本統治下の韓国に置きかえて描いたサスペンスドラマ。1930年代、日本統治下の韓国。スラム街で詐欺グループに育てられた少女スッキは、藤原伯爵と呼ばれる詐欺師から、ある計画を持ちかけられる。それは、莫大な財産の相続権を持つ令嬢・秀子を誘惑して結婚した後、精神病院に入れて財産を奪い取ろうというものだった。計画に加担することにしたスッキは、人里離れた土地に建つ屋敷で、日本文化に傾倒した支配的な叔父の上月と暮らす秀子のもとで、珠子という名のメイドとして働きはじめる。しかし、献身的なスッキに秀子が少しずつ心を開くようになり、スッキもまた、だます相手のはずの秀子に心惹かれていき……。

キャスト
秀子:キム・ミニ
スッキ(珠子):キム・テリ藤原伯爵:ハ・ジョンウ
上月:チョ・ジヌン
佐々木夫人:キム・ヘスク

スタッフ
監督:パク・チャヌク
製作:パク・チャヌク、シド・リム
製作総指揮:マイキー・リー
原作:サラ・ウォーターズ

劇場情報
TOHOシネマズ新宿ほか全国劇場公開中

公式ホームページ
http://ojosan.jp

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『哭声/コクソン』
2016年/156分/韓国

作品解説
『チェイサー』『哀しき獣』のナ・ホンジン監督によるサスペンススリラー。平和なある村にやってきた、得体の知れないよそ者の男。男が何の目的でこの村に来たのかは誰も知らない。村じゅうに男に関する噂が広がる中、村人が自身の家族を虐殺する事件が多発する。殺人を犯した村人に共通していたのが、湿疹でただれた肌に、濁った眼をして、言葉を発することもできない状態で現場にいることだった。この事件を担当する村の警官ジョングは、自分の娘に殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。娘を救うためにジョングがよそ者を追い詰めるが、ジョングの行動により村は混乱の渦が巻き起こってしまう。

キャスト
ジョング:クァク・ドウォン
イルグァン:ファン・ジョンミン
山の中の男:國村隼
ムミョン:チョン・ウヒ

スタッフ
監督:ナ・ホンジン
脚本:ナ・ホンジン
撮影:ホン・ギョンピョ
美術:イ・ウキョン
衣装:チェ・キョンファ

劇場情報
3月11日(土)〜シネマート新宿にて公開

公式ホームページ
http://kokuson.com

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【執筆者プロフィール】

村松 健太郎 Kentaro Muramatsu

脳梗塞との格闘も10年目に入った映画文筆屋。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年初頭から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。12年日本アカデミー協会民間会員・第4回沖縄国際映画祭民間審査員。15年東京国際映画祭WOWOW賞審査員。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方でレビュー、コラム等を執筆。

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