2016年7月11日月曜日

フランス映画祭2016〜映画『エヴォリューション(仮)』Q&A レポート

ルシール・アザリロヴィック監督へのインタビューのお知らせと
フランス映画祭2016での上映後 Q&A のご紹介


この度「ことばの映画館」はフランス映画祭2016のために来日されたルシール・アザリロヴィック監督にインタビューを行いました。フランス映画祭2016で上映された新作『エヴォリューション(仮)』の公開予定である11月にあわせてインタビュー記事を掲載します。

photo by Masataka Miyamoto


今回は、インタビュー記事の掲載に先駆けて、フランス映画祭2016でのルシール監督のQ&Aをご紹介いたします。
(6月27日(月)、有楽町朝日ホールにて開催されたフランス映画祭2016でのジャパンプレミア上映後、ルシール・アザリロヴィック監督の舞台挨拶で行われた観客との質疑応答)

ルシール監督:『エヴォリューション(仮)』は『エコール』(2004)より前から構想があったので、ずいぶんと長いあいだ企画をあたためていました。一番最初にあったイメージは病院と少年、そして少年と母親の関係性を描くことです。『エヴォリューション(仮)』があったからこそ『エコール』があったとも言えます。また、デジタルで撮影した映画ですが、テクスチャー(触覚)にこだわり、あまり鮮明には撮りたくなかった。衣装なども"性的"ではない官能性を意識しています。

観客A:この作品が直接影響を受けている作品はありますでしょうか?

ルシール監督:特に直接影響を受けた映画はありませんが、太陽が燦々と照っている田舎の村で怖いことが起こるという話は『ザ・チャイルド』(1976年に制作されたスペインのホラー映画)、あとはデヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』の影響はあるかもしれません。また、『エヴォリューション(仮)』は言葉の映画というよりはシュルレアリスティックな無意識を描いているので、ヤン・シュヴァンクマイエルの影響なども挙げられるかもしれません。

観客B:理屈ではなく、感じる映画だと思いました。

ルシール監督:たしかにそのとおりです。もし理屈があるとすれば、それはあくまで抽象的な意味であって、"夢"の理屈で構築されている作品です。私はこの映画が、感覚的、有機的、精神的な映画であって欲しいと思います。

観客C:これまでのルシール監督の作品(『ミミ』や『エコール』)が一貫して子供の視線から描かれている理由を教えてください。

ルシール監督:10歳から15歳くらいの子供は感受性が発達していて創造力が豊かです。まだ大人に従わなければならない時期だけれども、何か内に秘めた強い感情を持っている。私はそういう子供の気持ちというのを表現したかったのです。

質疑応答後、ルシール監督は、作中に登場する赤いヒトデをモチーフにしたブローチを胸に、チャーミングな笑顔で一礼すると大きな拍手とともに会場を後にしました。

© LES FILMS DU WORSO • NOODLES PRODUCTION • VOLCANO FILMS • EVO FILMS
A.I.E. • SCOPE PICTURES • LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

ことばの映画館によるルシール監督のインタビュー記事、『エヴォリューション(仮)』の劇場公開をおたのしみに!





映画『エヴォリューション(仮)』
2015年/フランス、スペイン、ベルギー/フランス語/81分/DCP/2.35/5.1ch

『エコール』の監督が贈る、最も美しい“悪夢”。
少年と女性しかいない、人里離れた島に母親と暮らす10歳の二コラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めた二コラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。“エヴォリューション(進化)”とは何なのか…?

© LES FILMS DU WORSO • NOODLES PRODUCTION • VOLCANO FILMS • EVO FILMS
A.I.E. • SCOPE PICTURES • LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

ギャスパー・ノエの公私にわたるパートナーであり、森で暮らす少女たちを描いた『エコール』のルシール・アザリロヴィック監督が贈る、最も美しい“悪夢”。映画祭で上映されるや否や「初期クローネンバーグを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等大きな反響を巻き起こした。

監督:ルシール・アザリロヴィック
出演:マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエ
配給:アップリンク

2015年 トロント国際映画祭 正式出品
2015年 サン・セバスチャン国際映画祭 審査員特別賞・最優秀撮影賞受賞
2015年 ストックホルム国際映画祭 最優秀撮影賞
2015年 ナント・ユートピア国際SF映画祭 最優秀撮影賞

2016年11月 渋谷アップリンク、新宿シネマカリテほか全国順次公開

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