2015年10月1日木曜日

東京国際映画祭~ラインナップ発表会~ text藤野 みさき



 アジアで最も大きな映画の祭典である、東京国際映画祭。2015年10月22日(木)の開幕に先駆けて、2015年9月29日(火)、六本木アカデミーヒルズにて、本年度の東京国際映画祭のラインナップ発表会が行われた。中でも、11年振りに日本映画が3作品出品されることで大きな注目を集めた、本年のコンペティション部門。画家である藤田嗣治の半生を、オダギリ・ジョーを主演に迎えて描く小栗康平監督最新作『FOUJITA』、小野不由美の傑作小説を初映画化した中村義洋監督、竹内結子主演の『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』、『ほとりの朔子』等の作品で知られる深田晃司監督による、人間とアンドロイドの交流を通じて生と死を鋭く問いかけた『さようなら』。上記の日本映画3作品に加えて、この発表会まで明らかにされていなかった、コンペティション部門の残りの13作品が一挙に出揃った。


(『FOUJITA』の小栗 康平監督)

残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-主演の竹内結子さん)

(『さようなら』主演のブライアリー・ロングさん、 深田 晃司監督)


まず本年のコンペティション部門では、全16作品中7作品と最も出品作品の多かったヨーロッパ映画。フランスからは、近年『最強のふたり』や『グレート・デイズ! 夢に挑んだ父と子』等、逆境を乗り越える実話が注目を浴びているが、今回の出品作品である『スリー・オブ・アス』も、激動の社会を生きる家族を描いた感動の実話物語だ。続いて、日本でも注目を集めたヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督『雪の轍』で知られるトルコからは、本作が長編第1作目となるムスタファ・カラ監督の『カランダールの雪』が選出。チェコからは、観客の胸を締め付ける見事な結末が注目の『家族の映画』、イタリアからは、暖かな笑いが会場を包み込むコメディ・ドラマ『神様の思し召し』が出品。オランダとデンマークからは、仏俳優であるグレゴワール・コランを主演に迎えて現代の戦争を描いた『フル・コンタクト』、戦時直後を舞台にした『地雷と少年兵』がそれぞれの戦争を通じて人間の姿を描く。そして「最も今年のコンペティションの中ではアート映画に仕上がっていると思います」と、プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦氏も推薦のエストニア映画の『ルクリ』も見逃せない。



 続いて、アジアからは、中国・タイ・イランの3ヶ国の作品がノミネート。中国からは、初恋の女性を思い続ける少年を、現代の若手代表格のハオ・ジエ監督がコミカルに描いた『ぼくの桃色の夢』が満を持して東京国際映画祭に初出品される。タイからは、同じく初恋の追体験に胸が締めつけられる青春映画『スナップ』が選出。近年勢いを増すイランからは、結婚式を翌日に控えたある女性が死に、その真実を追うという、アスガー・ファルハディ監督『彼女の消えた浜辺』を想起させる『ガールズ・ハウス』と、注目の映画が並ぶ。




 最後に、アメリカと現在活気溢れる中南米の2ヶ国からそれぞれ1作品ずつが選出された。アメリカ・カナダ・イギリス合作、米国が生んだ名トランペット奏者チェット・ベイカーの光と影を、イーサン・ホーク主演で描いた『ボーン・トウ・ビー・ブルー』、75分間を見事な手腕で描いたメキシコの新星ロドリゴ・ブラ監督によるノンストップ・サスペンスの『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』。そして最後に、ブラジルから届いた、60年代を舞台にある女性精神科医を描いた実話映画『ニーゼ』と、こちらも色とりどりの映画が出品された。

 全86ヶ国、応募総数1409本の中から選出された、コンペティション部門の全16作品。その基準について、矢田部氏は「監督さんの個性を一番に重視し、なるべく多くの国、そして多くのジャンルを揃えようと考えております」と述べていた。「映画は世界に開いた窓である」という矢田部氏の言葉通り、多くの国々の映画がコンペディション部門だけでなく様々な部門から出揃った、本年で30周年を迎える東京国際映画祭。東京グランプリの行方だけではなく、スクリーンが映し出す、その一つ一つの映画との出逢いを、今から心待ちにしたい。



(写真左から 小栗 康平監督、中村 義洋監督、竹内 結子さん、『さようなら』主演のブライアリー・ロングさん、 深田 晃司監督)

(text、写真:藤野 みさき)




東京国際映画祭

28回を迎える東京国際映画祭(以下TIFF)は、1985年に日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生し、アジア最大級の国際映画祭へと成長した。アジア映画の最大の拠点である東京で開催され、世界中から優れた映画が集まり、国内外の映画人、映画ファンがあつまって、新たな才能とその感動に出会う交流する場となっている日本で唯一の国際映画祭である。
才能溢れる新人監督から熟練の監督までを対象に、世界中から厳選されたハイクオリティーなプレミア(世界で最初に作品を披露する)作品が集結。国際的な審査委員によってグランプリが選出される「コンペティション」には世界各国から毎年多数の作品が応募されている。
その初期から一貫して映画クリエイターの新たな才能の発見と育成に取り組んでおり、入賞した後に国際的に活躍するクリエイターたちが続々現れている。未見の若く新しい才能と出会える、映画ファン必見の映画祭である。


作品解説コンペティション部門16作品)
〜日本〜
『FOUJITA』
126分 日本語、フランス語 カラー | 2015年 日本=フランス
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=9

『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』
107分 日本語 カラー | 2015年 日本
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=31

『さようなら』
112分 日本語、英語、フランス語 カラー | 2015年 日本 
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=27

〜ヨーロッパ〜
『スリー・オブ・アス』
102分 フランス語 カラー | 2015年 フランス
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=1

『カランダールの雪』
139分 トルコ語 カラー | 2015年 トルコ=ハンガリー
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=5

『家族の映画』
95分 チェコ語 カラー | 2015年 チェコ=ドイツ=スロベニア=フランス=スロバキア
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=7

『神様の思し召し』
87分 イタリア語 カラー | 2015年 イタリア
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=15

『フル・コンタクト』
105分 英語、フランス語 カラー | 2015年 オランダ=クロアチア
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=11

『地雷と少年兵』
106分 デンマーク語、ドイツ語 カラー | 2015年 デンマーク=ドイツ
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=17

『ルクリ』
99分 エストニア語 カラー | 2015年 エストニア
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=25

〜アジア〜
『ぼくの桃色の夢』
100分 北京語 カラー | 2015年 中国
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=21

『スナップ』
97分 タイ語 カラー | 2015年 タイ
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=29

『ガールズ・ハウス』
80分 ペルシア語 カラー | 2015年 イラン
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=13

〜アメリカ・中南米〜
『ボーン・トゥ・ビー・ブルー』
97分 英語 カラー | 2015年 アメリカ=カナダ=イギリス
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=3

『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』
75分 スペイン語 カラー | 2015年 メキシコ
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=19

『ニーゼ』
109分 ポルトガル語 カラー | 2015年 ブラジル
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=23

公式ホームページ
第28回 東京国際映画祭
http://2015.tiff-jp.net/ja/
※2015年10月22日(木)〜10月31日(土) 10日間

第28回TIFF 上映作品一覧

劇場案内

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